2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

嵐の日

あなたの腕に触れるあなたと同じ香りになるあなたの虚ろな目を覗き込むあなたの不安定な心に触れるその日もあなたは夜中に帰ってわたしに多くのキスをした二人はワインしか飲まないあなたの髪を乾かすのはいつもわたしの役目ベランダには雨粒が音を立て夜の…

blanket

すれ違った人からふと香った香水のような、私にとって悪くない匂い。その匂いに脳が、何を思ったのか一瞬のうちに目の前に引き出す出来事。それは、ちょうど今くらいの時期の蒸し暑い東京の夜のことでした。私の人生においては、到底手の届かないような輝か…

宵雪

銀色の雪にありとあらゆるものが吸収され耳が塞がれる私はその日も抜け出して雪の舞い荒ぶ街灯や赤と黄に点滅する交差点を抜け真冬の川辺にたどり着くやっと見つけた音を覗き込むように抱き寄せるとふいにこの宵闇が見せたのだいつの日かこの寂しい川と私は…

isomytal

いつも怯えて帰るまで 音で夢だとわかる ここが家ではないことこんなに怖れ 隠れ 避けて 憎んで 愛した あなたと向き合うこともせずにいたけど もう遅いあなたが消えるまで 待ってくれない私の欲深さ 疑われるとすぐに泣いて無邪気に求める 叱る 叱るこのま…

Aと私の続き

あまり続いて書くようなこともないのだけれど、続きます。Aは私がいないと眠れないので、一緒に眠れる日には、それまで眠れなかった分たくさん眠る。疲れ果て、倒れるように。そういえば、最初の頃Aは私と一緒にいて眠っても、途中で過呼吸になって、良く飛…

Aと私

ある日、私が勤めていた店に、Aは1人で客として来た。格好からして、恐らくは同業であるとわかった。朝までやっているうちの店に来る前に、相当飲んでいたらしく、足取りも目つきもふらふら。カウンターに着くなりAは、とにかく甘いカクテルが飲みたいと私に…

みなみ風

私の故郷は海に囲まれた港町で、街中もわりと平地なので、いつも風が強い。漂う潮風の香りは私の生まれ育った香り。そして、南風が吹くと、決まってその後は嵐が来るのだ。ちなみに、地元紙の詩や短歌の投書が載っている別紙の折り込みの名前が“みなみ風”と…